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Octane.JPにChief(オラさんインタビュー)記事が掲載されました

Chiefのデザイン責任者であるオーラ・ステネガルドさんのインタビュー記事が公開されましたのでご紹介します。

以下、引用: Octane.JP

あの伝説の名車がボバースタイルで帰って来た|インディアンの新型車「チーフ」

インディアン・モーターサイクル(以下インディアン)の新型車「チーフ」。今年デビュー100周年を迎えたこのモデルは、2021年モデルとしてラインナップに名を連ね、日本での販売開始を静かに待っている。100年を優に越えるインディアンの節目に必ず登場する「チーフ」。その新型車を通して、いまのインディアンをひもとく。

 

インディアンは、先進的なブランドだ。その母体は、ATVやサイド・バイ・サイド、スノーモビルなどを開発し製造販売するアメリカンブランド、ポラリスインダストリー。いうなれば"乗り物"造りのプロ集団だ。そこからの知見を生かせば、モノ造りは自ずと先進性をおびてくるだろう。また目下というか創業時からと言うか、同じくアメリカ生まれの因縁のライバルブランドとの競争において、自らの優位性を打ち出すには、先進的な技術を取り入れたモノ造りが主体となるだろう。そしてこれまでインディアンがラインナップした製品を見ると、それは一目瞭然だ。

 

しかし、この新型「チーフ」は違う。自らの歴史をひもとき、そこから紡ぎだしたストーリーを明確に描き、ライバルブランドが幅を効かすドル箱市場に"直球勝負"で乗り込んできた。それが、カスタムバイクのようなディテールを持つ「チーフ」だ。

 

初代チーフは1921年に発売された。その前年にスポーツモデルの「スカウト」を発売し、より排気量の大きな1000ccエンジンを搭載したチーフは、すでにライバルたちと熾烈なシェア争いを繰り広げていたインディアンの次世代フラッグシップモデルという命を背負っていた。またポラリスがインディアン・ブランドを手に入れ、新体制でイチから開発し、2013年に最初に発売したのもチーフだった。そして今年はチーフ誕生100年の記念年である。

 

その新型チーフに求めたのはシンプルさであり、美しさだという。2018年にインディアンのデザイン部門の責任者となったオラ・ステネガルドは、オンラインのインタビューでこう続けた。

 

「理由は簡単。シンプルなバイクは永く愛されるからだ。そして時間や世代を超越する。チーフはそんなモデルであるべきだと考えた。そして美しくシンプルなフレームに、美しくシンプルなパーツを、正しい位置に搭載する。そのことを徹底した」

 

サンダーストローク116と名付けられたOHV空冷V型2気筒1890ccエンジンは、シリンダーヘッドとシリンダーの冷却フィンが異なる方向を向くマルチダイレクション・フィンやシリンダーと平行して建つプッシュロッドカバー、シリンダーヘッドから下に向く排気口など、初代チーフから受け継ぐディテールを持つ。そのエンジンを、チーフのために専用に開発したフレームに搭載。リアサスペンションを寝かせ、ステアリングヘッドから流れるフレームラインをリアタイヤ中心部まで繋げることで、リアサスペンションを持たない初代チーフのフレームラインを再現している

 

ユニークなのは、ラインナップした「チーフ」の3つのバージョンが、かつて流行したカスタムバイクのスタイルを踏襲していることだ。「チーフ・ダークホース」は前後キャストホイールに身体に近い位置にあるステップ、低いハンドルでスポーティなキャラクターを作り上げた1980年代のスタイル。「チーフ・ボバー」は高いハンドルに足を投げ出す、チョッパーのような1960年代のスタイル。そして「スーパー・チーフ」はスクリーンに革製バッグ、フットボードを採用した1940年代のスタイルだ。これは何を意味するのか。その質問にステネガルドはこう答えた。

「歴史をひもとき、古いインディアンの写真を探すと、そこに写るオーナーたちはマシンをシンプルにカスタムし楽しんでいた。それは紛れもなくインディアンの歴史の一部だ。新型チーフで試みたのは、そのエンスージアストたちに愛されたインディアンだ」

 

フレームも外装の一部と捉え、美しくあることを追求したという。スチール製鋼管をベースに、それが交わるステアリングヘッドやフレーム後端には、鋳造や鍛造した継ぎ手を作り、繋げている。このオールドスクールなフレーム製作技法は、生産性向上を目指して進化した現在の製造ラインで再構築することが難しく、しかしその方法でしかシンプルで美しい車体が造れないことから、フレーム製作はおおいに苦労したという。

 

デザイン部門の責任者/オラ・ステネガルド(Photography: Hermann-Koepf)。2018年春から現職に就いている。